はじめに
「忙しい日々のなかで、どこに時間を割くべきか分からない」
——これは、競技・仕事・学びを同時に進めるデュアルキャリア人に共通する悩みです。
1週間単位でPDCAを回していても、“年”というスパンで全体を俯瞰できていないと、どこかでバランスが崩れてしまう。
第6回では、現役アスリート兼ビジネスパーソンの実例をもとに、
1年間を通して「競技×仕事×学び」を設計・運用するロードマップテンプレートを公開します。
“短期集中”ではなく、“継続できる構造”をつくる。それが目的です。
第1章:年間ロードマップの考え方
年間ロードマップとは、「12か月を意図的にデザインする計画表」です。
日々のToDoではなく、シーズン単位の目的・リズム・配分を整理し、ブレない軸を持つための“設計図”。
目的は「配分の最適化」ではなく「集中の切り替え」
1年を通じて完璧に両立するのは不可能です。
だからこそ、**「どの時期に、どの軸を優先するか」**を明示しておく。
これが、心身のリズムを守り、成果の再現性を高める鍵になります。
🎯 デュアルキャリアの最適解は、「常にバランスを取る」ではなく、「意図的に傾ける」。
第2章:シーズンごとの4区分モデル
年間を4つのフェーズに分け、それぞれの軸を明確にします。
以下は、競技アスリート×リモートワーカーの実例です。
| フェーズ | 時期 | 主軸 | キーワード |
|---|---|---|---|
| Preparation(準備期) | 1〜3月 | 学び×設計 | 目標設定/基礎トレ/スキルアップ |
| Execution(実行期) | 4〜6月 | 仕事×競技 | 業績KPI/初戦/実務パフォーマンス |
| Peak(ピーク期) | 7〜9月 | 競技中心 | 試合/遠征/疲労管理/成果測定 |
| Reflection(再構築期) | 10〜12月 | 学び×分析 | 振り返り/データ分析/来期準備 |
この4フェーズを“円”ではなく“螺旋”で捉えることが重要です。
毎年同じサイクルを回しながら、螺旋のように1段ずつ上がっていくイメージです。
🧭 アクション:今の自分がどのフェーズにいるかを、まず1枚の紙に書き出そう。
第3章:年間ロードマップテンプレ(構成)
テンプレートは、次の3シート構成で設計します。
1️⃣ Yearly Map(全体設計)
- 年間の「目的・優先軸・キーワード」
- 4フェーズごとのKPI/重点テーマ
- 感情曲線(モチベ・疲労・充実度)
2️⃣ Quarter Plan(四半期ごとの設計)
- 3か月ごとの目標・注力領域・行動習慣
- チェック項目(進捗・回復・人との接点)
3️⃣ Review Log(月次レビュー)
- 成果・感情・改善・次月テーマ
- 「できた/できなかった」よりも、「なぜ」を書く
📥 Googleスプレッドシート版テンプレート(DL可)
→年間ロードマップ_テンプレート(DualCareerLab)
第4章:KPI設計のポイント(競技×仕事×学び)
KPIを“3本軸”で分けると、ブレなくなります。
| 軸 | KPI例 | 補足 |
|---|---|---|
| 競技軸 | シーズン出場率/アベレージタイム/得点率 | 定量と定性のバランスを取る |
| 仕事軸 | 売上/商談化率/NPS/プロジェクト達成率 | 成果に直結する数値を1つに絞る |
| 学び軸 | 資格取得/読書数/英語スコア/アウトプット本数 | 「習慣の成果」を測る指標を採用 |
💡 KPIは“3軸×1指標”まで。多すぎると続かない。
また、KPIには「リカバリーKPI」も入れておきます。
睡眠時間/週休率/体脂肪率など、回復を数値化する指標があると安定します。
第5章:感情曲線の可視化
デュアルキャリアは、数字だけでは測れません。
「調子」「充実感」「ストレス」「達成感」などを、月次で1〜10段階評価します。
スプレッドシート上では折れ線グラフにし、KPIとの相関を確認します。
例)
- 仕事KPIが上がると、学び軸が下がる傾向
- 競技が好調の月は、自己効力感↑
- 感情曲線が下がるタイミング=「リカバリー再設計サイン」
📊 アクション:毎月1回、「感情のログ」を3分で記録。
第6章:実例(現役アスリートの年間ロードマップ)
| 月 | 主軸 | 重点テーマ | コメント |
|---|---|---|---|
| 1月 | 学び | 英語学習再開/TOEIC600目標 | シーズン前準備 |
| 2月 | 仕事 | 新規営業KPI設定/提案精度強化 | リモート勤務に集中 |
| 3月 | 両立 | 食事管理×早寝習慣 | 春合宿でリズム再構築 |
| 4月 | 競技 | 開幕戦/強度慣らし | フィジカル優先 |
| 5月 | 仕事 | 展示会・提案強化/FS同行 | 商談リズム確立 |
| 6月 | 学び | note執筆/アウトプット習慣 | 自己発信強化 |
| 7月 | 競技 | 試合/遠征/疲労調整 | 睡眠最優先 |
| 8月 | 回復 | 練習軽減+回復設計 | 体重・体脂肪率調整 |
| 9月 | 競技 | 後半戦・再加速 | 集中ブロック固定 |
| 10月 | 仕事 | セールス分析/次期戦略 | KPIレビュー期 |
| 11月 | 学び | 英語×読書/副業プラン構想 | 来期仕込み |
| 12月 | 振返 | 年間レビュー/感情曲線分析 | 来期KPI再設計 |
🧩 “優先軸を1つに決める月”を明示するだけで、生活がシンプルになる。
第7章:年間設計を「習慣」にするコツ
① 年初に「3つの問い」に答える
- 今年、どんな状態を「達成」と呼びたいか?
- 何を優先し、何を後回しにするか?
- 12月に「これはやり切った」と言えるのは何か?
② 週次で“傾き”を再確認
週1回、スケジュールを見ながら「今週はどの軸が主か?」を明示。
思考の切替が早くなり、迷いが減ります。
③ 季節の変わり目でリセット
季節=シーズン切り替え。
疲れや気候変動を“戦略的休息”に置き換え、再スタートを習慣化。
🌱 アクション:毎季に「RESET WEEK」を設け、1日だけ何もしない日を設定。
第8章:年間ロードマップ活用例(導入後の変化)
導入から半年で見られた変化:
- 競技パフォーマンス:平均+7%(疲労管理改善)
- 仕事KPI:商談化率+5pt
- 学習継続率:週4→週6に向上
- 感情スコア平均:6.2→7.4(“やれている感”の増加)
共通点:
“今、どのフェーズにいるか”を明文化した人は、圧倒的に迷いが減っていた。
第9章:次のアクション
1️⃣ GoogleスプレッドシートでテンプレDL
2️⃣ 自分の年間フェーズを4つに区切る
3️⃣ 各フェーズに「主軸」「KPI」「テーマ」を記入
4️⃣ 月1回、感情ログを更新
5️⃣ 季節ごとにRESET WEEKを設定
これだけで、“年単位での安定した両立”が始まります。
まとめ:継続の秘訣は「切り替えの設計」
デュアルキャリアは、同時進行ではなく切り替え進行の技術。
年間ロードマップを持つことで、「やる」「休む」「切り替える」を意識的に行えるようになります。
この設計ができた瞬間、競技も仕事も、年単位で伸びていく構造が完成します。
💡 明日からのアクション:
- まず“今のフェーズ”を決める
- 3か月後に何を手にしたいか書き出す
- それをテンプレートに落とし込むだけ

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