目次
はじめに
採用市場は「フルコミット前提」から「兼業を前提にした価値交換」へ。
アスリート、クリエイター、研究者、地域活動者……。一流の“もう一つの顔”を持つ人材ほど、仕事への再現性が高く、組織に新陳代謝をもたらします。
本記事は、デュアルキャリアを武器にする採用戦略の完全ガイド。求人票、選考設計、オンボーディング、ブランド発信、人的資本開示まで“そのまま使える”設計を公開します。
第1章:なぜ「兼業前提」で採用するのか
- 差別化:給与・リモートだけの差は限界。**“両立を応援する会社”**は候補者に刺さる。
- 質の高い動機:社外での挑戦は自己効力感×自律性が高く、パフォーマンスに直結。
- 採用広報の資産化:競技・登壇・制作物が語れる物語になり、自然流入を生む。
- 人的資本ストーリー:Well-being/Reskilling/ダイバーシティの実装例として強い。
結論:**「制度」ではなく「価値提案」**としてのデュアルキャリア採用へ。
第2章:採用ブランドの柱(3つの約束)
- 成果で評価する(時間ではなくアウトカム)
- 予定を先に置ける(可変枠の“先入れ”を制度化)
- 社外の学びを歓迎する(社内LT/文書化で還元回路を作る)
これを採用ページ・求人票・選考過程のすべてに一貫表示。
第3章:求人票テンプレ(コピペ可)
タイトル
- 例:〈兼業歓迎〉SaaSインサイドセールス|競技・登壇・創作と両立できる“成果主義”の営業
冒頭3行(価値提案)
- 私たちは、兼業を前提に“成果で評価”します。
- 練習・登壇・制作などの可変枠は先にカレンダーに固定できます。
- 社外の学びは社内LT/文書化で積極的に歓迎・評価します。
職務内容(要点)
- 主要KPI/成果責任
- 可変枠共有と集中ブロック(90分×3)運用
- 月次3行レポ(成果・学び・還元)
歓迎要件(デュアルキャリア適性)
- 継続的な競技/制作/研究/地域活動の実績
- 自律的に時間設計し、衝突リスクを言語化できる人
就業環境
- フルリモート/フレックス(コアタイムなし 例)
- 1on1・社外露出ガイド・競合マトリクス明文化
選考プロセス
- 書類→面談1(キャリア×時間設計)→面談2(実務)→最終(相互期待値合わせ)
表記例
- “デュアルキャリア歓迎/兼業推奨/成果評価/可変枠先入れ”
第4章:選考設計(質問バンク付き)
4.1 スクリーニングで見る3点
- 継続性:社外活動の継続年数・頻度・成果
- 時間設計:週次の集中ブロックと可変枠の置き方
- 還元思考:学びを社内に翻訳できるか
4.2 面接質問バンク(そのまま利用可)
- 実務×両立:「今週の予定に可変枠を先に置くなら、どこに?理由は?」
- 成果思考:「あなたの職務を90分×3本に分解すると?」
- 学びの翻訳:「社外の経験を社内に10分LTで還元するなら、タイトルは?」
- リスク管理:「競合・機密・過重労働、どこにリスクがあり、どう線引きする?」
4.3 ケース面接(例)
- “展示会週+遠征”の週。バッティングをどう避け、KPIを守るか?
- 回答の良い例:
- 月曜午前で「提案書完成」「アポ設定の締め切り」
- 火〜木で外出を集約、金曜に調整・レビュー
- 遠征中は音声学習に置換、商談負債ゼロ化で週越えしない
第5章:オファー〜オンボーディング(最初の90日)
Day 0–14:合流準備
- 可変枠の基本パターンをヒアリング
- 「集中3本」カレンダー雛形を配布
- 広報・競合・機密のガイドを同時説明
Day 15–45:成果の型づくり
- OKR/KPIを**“入力ではなく成果”**に寄せる
- 1on1でバッファ・回復の習慣化(睡眠・移動・食事)
- 週次レビュー:詰まりの見える化(赤信号を早く出す)
Day 46–90:還元回路の構築
- 月1回の10分LTで学びを共有
- 社内Wikiに**“デュアルキャリア・ログ”**を作成
- 採用広報(note/PR)にインタビュー記事を公開
第6章:採用広報(コンテンツ設計)
目的 | コンテンツ | 導線 |
---|---|---|
認知 | 社員ストーリー(両立の1日) | 採用LP/note |
信頼 | 具体制度(ガイド図解) | 採用LP/PDF |
転換 | 募集記事(求人票×価値提案) | 応募フォーム |
継続 | 月次連載(学びの社内還元) | SNS/メルマガ |
タイトル例
- 「練習と会議は両立できる——私の“90分×3本”仕事術」
- 「遠征週に商談キャンセルを起こさないスケジュール術」
第7章:人的資本開示と指標(HR×IR連携)
開示に載せるべき指標
- デュアルキャリア比率(在籍者の◯%)
- 集中3本実施率(ブロック確保の定着度)
- 先入れ率(翌週の可変枠が金曜昼までに入っている割合)
- 離職率・eNPS(制度導入前後)
- 採用単価・自然流入(採用広報の効果)
“制度の有無”ではなく“運用の成果”で語る。
第8章:リスクと対応(法務・労務・情報)
リスク | 兆候 | 初動 | 定着策 |
---|---|---|---|
機密・競合 | 類似資料・関係者接点 | ガイド再周知 | 競合マトリクスの申請必須 |
過重労働 | 深夜稼働連続 | 稼働分散 | 週報に深夜フラグ/アラート |
公表トラブル | 肩書・表記ミス | 投稿修正 | 事前承認+表記テンプレ |
第9章:成功パターンまとめ(チェックリスト)
- 求人票に「兼業歓迎/成果評価/先入れ」を明記
- 面接で時間設計と還元を質問
- 90日オンボで可変枠+集中3本を定着
- 月次3行レポ→採用広報に転用
- HR×IRで運用指標を開示
FAQ
- Q. パフォーマンス落ちない? → 成果指標で管理し、衝突は先入れで抑止。
- Q. 公平性は? → ルーブリック×KPIでアウトカム評価に統一。
- Q. 初めてで不安 → パイロット3–5名から始め、90日で検証→展開。
まとめ
“兼業を許す”では弱い。“兼業を前提とした価値提案”が、採用の新しい競争力になる。
求人票・選考・オンボ・広報・開示まで、一貫して成果×可視化×先入れを設計しよう。
それが、良い人材と長く付き合うための最短ルートです。
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